第6回に続く、連載第7回。
出資金を振込、払込証明書を作成
公証役場での手続きを無事に終えたら、次は出資金の額を「個人」の銀行口座に振り込みます。そしてその入金を証明するコピー資料を作成します。
通帳があれば通帳のコピーで事足りますが、通帳がないネット銀行(インターネット専業銀行)でも取引画面等のプリントアウトで問題ないとのことです。
私の場合、「住信SBIネット銀行」に振り込みました。
重要なのは入金するタイミングで、株式会社の場合「公証役場で認証済みの定款を受け取った日以降」であることが絶対条件のようです。
気になったのは前後のプライベートな入出金明細や残高を黒塗りして隠しても良いのかどうか、という点です。
ネットで調べると、少なくとも関係のない入出金については、黒く塗りつぶしても問題ないという情報がたくさんヒットしました。下記は一例です。
上記のリンク先では「残高については、塗りつぶしていいのかどうかは分かりません…資本金の入金直後の残高は表示していただいています」と書かれており、やはり残高は表示されていた方が良いのかもしれません。
ただ、後半には「出資金は払い込んだ事実が大切であり、残高は問題視されません」とも明記されているので、本当のところは定かではありません…。
住信SBIネット銀行の場合、代表口座の入出金明細で入金日のみ(1日のみ)を指定すると、前後の入出金は一切表示されなくなるので黒塗りの必要がなくなり好都合です。
その上で、そのページ自体をブラウザの印刷機能でプリントアウトしました。下記が実際に登記で使ったその払込証明書の実例です。
「PDFでダウンロード」という機能もありますが、支店番号しか表示されず、支店名の表示がなかったため、上記の方法にしました。
freee会社設立の管理画面からダウンロードできる「設立登記書類の綴じ方ガイド」によると、表示されているべき情報は下記の通りだそうです。
- 銀行名・支店名・口座番号
- 通帳の名義人
- 資本金を入金した明細ページ(日付、振込人、金額がわかること)
なお、残高は表示されてしまうので、黒塗りを考えるよりも、一時的にハイブリッド口座へ移すなどして調整すると良いかと思います。
通帳のコピーやネット銀行のプリントアウトに関する説明は、下記のページが分かりやすかったです。
コピーやプリントアウトについて、モノクロでも良いのかどうか迷いましたが、下記ページには「カラーコピーでなく、白黒コピーで結構です」というくだりがある通り、モノクロ印刷にしました。
登記書類を作成
設立登記書類は、freee会社設立の「登記書類を印刷しましょう」コーナーでPDFファイルとしてダウンロードできます。ダウンロードする際、「登記書類を提出する日」を設定するので、提出日を確定させてからダウンロードする必要があるのが注意点です。
天候や体調、交通事情等で日程が変わり、作り直しが生じると非効率なので、事前にある程度、作成の要点は把握しておいた上で、私は法務局へ行く当日の午前中にプリントアウトし、作成しました😊
書面はカラー要素がなかったため、モノクロプリントでも問題ないと考え、カラートナーが不足気味だったのもあって、モノクロ印刷しました。
作成にはとにかく、freee会社設立の管理画面からダウンロードできるPDF「設立登記書類の綴じ方ガイド」が非常に役立ちます。このガイドを頼りに進めました。
折角作成した代表印(法人印/会社の実印)はここまでなかなか出番がありませんでしたが、ついにこの登記書類作成時に初登板となります。
作成していて気づいた点をいくつかメモっておきます。
- 「株式会社設⽴登記申請書」は2枚、プリントアウトされますが、左上に「控」マークがある2枚目の方は文字通り「控え」なので提出には使いません。
- 「登録免許税納付用台紙」は四角い罫線と真ん中に「収⼊印紙」と印字されただけの用紙ですが、そのまま利用します。後ほど、法務局へ行った際、収入印紙を購入し、その場でここに貼付します。
- 「払込証明書」は払込証明書単独として製本する必要があります(またはホチキス留め)。プリントアウトの中にある「払込みがあったことを証する書⾯」という1枚と、前述の銀行ページのプリントアウトの1枚、計2枚だけですが、製本・押印をしました。なお、左側の余白が思いのほか少ないため、製本テープに隠れてしまう問題があり、製本テープを細めに加工する手間がありました。
- 「会社の実印(代表印)」と「個人の実印」を押す箇所が複数あります。逆に押してしまうとNGのようです。間違わないよう、注意して押印します。
- 「発起人決議書」と「OCR用紙」(見出しは「別紙」)には電子公告URLとして、freeeのドメインの具体的なアドレスが明記されていました。公証役場段階の定款にはURLは一切記載されていなかったのに、ここに登場するんだなと驚きました。
- 全部まとめて製本するのかと思ったら違って、まず製本ではなく、単なるホチキス留めになります。また「OCR用紙」と「印鑑届出書」はホチキス留めのグループに含めず、単独のままにしておきます。ただ、バラバラにならないよう、最終的には全体をクリップで簡易的に留めました。
「就任承諾書」不要を巡る二度手間
さて、ここで一つ最も重要な点です。
連載の構成的には話が前後してしまうのですが、重要なので敢えて構成を崩します。
「設立登記書類の綴じ方ガイド」の「就任承諾書」の説明ページには「※代表取締役1名のみの設立時には就任承諾書は不要です。」と明記されており、今回は、すべて私一人の法人なので、当然これに該当すると考え、就任承諾書は省きました。
【追記】後日確認したところ、「設立登記書類の綴じ方ガイド」の「就任承諾書」の説明ページから「※代表取締役1名のみの設立時には就任承諾書は不要です。」の一文は削除されていましたのでこの問題は解消されました😊 |
ところが、法務局に提出した後、2日後に電話があり「就任承諾書が不足しています」と指摘されました。
freee会社設立を利用しており、その説明書にある不要のくだりを伝え、さらにはネットで散見された類似の解説についても説明しました。その上で、法務局側でも再度確認してもらいましたが、再び電話があり、やはり「就任承諾書は必要」との結論になりました。
理由は、完全に解釈できた訳ではありませんが、どうもfreee会社設立の「電子定款」を利用し、行政書士法人が代理人として介在していることが原因との言い回しでした。電子署名なので印鑑が照合できない的な話もありました。
いずれにしても、急遽、再度法務局へ出向き、追加で就任承諾書を提出する二度手間が発生しました。
freee会社設立を利用する場合、私と同じようにfreeeの電子定款サービスもあわせて利用する方は多いと思います。今までこういう指摘がなかったのか、とても不思議です。
一応、freeeの方へは、問い合わせフォームを通じて、経緯を添えた上で、「設立登記書類の綴じ方ガイド」の説明を訂正した方が良いのでは、という連絡を入れてみました。
例え「代表取締役1名のみ」の株式会社であっても、少なくとも電子定款を利用する場合、「就任承諾書」は入れておくことをオススメします。
なお、その後、関連してもう1点、気が付きました。
freee会社設立からダウンロードできる登記書類PDFのうち、1ページ目「株式会社設⽴登記申請書」をよく見ると、添付書類の一覧に「設⽴時取締役及び代表取締役の就任承諾書 1通」と記載されています。
これはデフォルトで入ってしまっているので、PDFで特殊に編集しない限り、削除できません。
この項目がなければ、就任承諾書なしでも通用したのか、または電子定款でなければ逆にこの項目がない状態のPDFになるのかどうか、その辺は不明です…。
ということで、話が前後しますが、次回は法務局へ提出に行きます。
【追記】
この記事を公開後、freeeサポートから回答メールがありました。
定款を紙定款での作成で本人1名が代表取締役の場合、就任承諾書は不要となりますが、定款を電子定款で作成した場合は、発起人が定款に実印を押印することはありませんので、設立時代表取締役の就任の意思を定款に記載された事項から確認することができないため、就任承諾書のご提出が必要となっております。
弊社システムでは電子定款での作成をほとんどのお客様に行っていただいている状況にもかかわらず、紛らわしい表記となり、お客様にお手数をおかけいたしましたこと心よりお詫び申し上げます。
尚、本件につきましては担当部署に連携し対応致します。
メールを読むと、就任承諾書が必要だった理由がよりハッキリしました。
しかも、やはりfreee会社設立を使う方はほとんどが電子定款を選択するようで、となると「就任承諾書は不要」のくだりは修正するか、補足を明記した方が良さそうですね😊
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