クラウドワークスのインボイス制度に関する記事から学んだこと。クラウドソーシング系では適格請求書発行事業者が圧倒的に有利になる可能性

クラウドワークス(CrowdWorks)のお知らせブログに掲載されている「インボイス制度に伴う方針に関して」という記事が大変興味深いです。

各ワーカーが適格請求書発行事業者か免税事業者か次第で決まる

 クライアント側へ向けた段落、インボイス制度に則った請求書になるかどうかは「ワーカーさまの適格請求書発行事業者登録の有無により」異なり、「ワーカーさまが適格請求書発行事業者かどうかは、プロフィール画面等で確認可能になる予定」とのこと。つまり、ワーカーとクライアントに間にクラウドワークスが介在しても、結局のところ、そのワーカーが適格請求書発行事業者か免税事業者かですべては決まってしまうという説明です。

媒介者交付特例でクラウドワークスの登録事業者番号を利用

 なお、クラウドワークスは「媒介者交付特例」を活用し、登録事業者番号については各ワーカーの登録事業者番号ではなく、「株式会社クラウドワークス」の登録事業者番号を一括で使う予定とも書いてあります。

 ワーカーの中の個人事業主の方で、さらに適格請求書発行事業者の登録事業者番号を公言したくないという一部の限られた人だけ恩恵がありそうな仕組みです。

 法人であれば、国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで公表されていますし、単純に法人番号の頭に「T」を加えれば「T」(ローマ字)+法人番号(数字13桁)で登録事業者番号になるので隠す意味はありません。一方、個人事業主の方は、同じく公表サイトで公表はされていますが、めちゃくちゃ検索性が悪いので、どう考えても、個人事業主の方から自発的に登録事業者番号を伝えてもらうのが現実的です(調べる気が起きないほどの仕組みです…)。

 但し、いずれも文末の表現が「…確認可能になる予定です」「…方向性で現状検討を進めています」等、流動的な面がある模様。

媒介者交付特例はワーカーも適格請求書発行事業者であることが大前提

 いい機会なので「媒介者交付特例」について調べると、中間業者(委託販売事業者/受託者)が事業主(委託者/売り手)の代わりに適格請求書を発行できる制度とのことですが、中間業者は当然ながら、事業主側も適格請求書発行事業者であることが要件の一つだそうです。つまり、事業主(クラウドワークスでいうところのワーカー)が免税事業者だと、媒介者交付特例を用いたとしても、適格請求書は発行できないということになります。

代理交付もワーカーが適格請求書発行事業者であることが大前提

 もう一つ「代理交付」という制度があることを知りました。端的にいうと、中間業者(委託販売事業者/受託者)が免税事業者の場合に利用できる制度で、やはり少なくとも事業主(委託者/売り手)が適格請求書発行事業者であることが大前提のものです。代理交付での適格請求書には事業主側の登録事業者番号や名称を記載するとのこと。中間業者が免税事業者である場合の制度なので当然といえば当然です。

 しかしそもそも代理交付のような状態というのは現実的にどの程度あり得るのでしょうか? かなりレアなケースだと感じます…。

ワーカーが免税事業者である場合の仲介的な特例は存在しない模様

 ここまで来ると頭に浮かぶのは、下記のケースを想定した特例はないのか?という点です。

  • 事業主(委託者/売り手)=免税事業者
  • 中間業者(委託販売事業者/受託者)=適格請求書発行事業者

 本当はこれが一番望まれている特例制度かと思いますが、調べた限り、これは無いようです。何としても免税事業者を減らし、適格請求書発行事業者を増やしたいという国の思惑があるため、それに反するこの特例だけは認められないとの考えが覗けます。

クラウドソーシング系では適格請求書発行事業者が圧倒的に有利になる可能性

 Twitterで「クラウドワークス インボイス」で検索すると下記のようなツイートを見かけました。

 インボイス制度が現状のまま進むとすると、クラウドワークスやランサーズのようなサービスではこの流れが強まると思います。同じ条件、同じようなスキルのワーカー、クリエイターがいたとして、一方が免税事業者、もう一方が適格請求書発行事業者だとしたら、クライアントは普通に考えて適格請求書発行事業者の方に依頼します。こればかりは仕方ない。この中間業者が介在する仕組みの場合、公正取引委員会の下請法でのディフェンスも及びにくい気がします。

 もしそのような土俵でやっていくのであれば、適格請求書発行事業者になるしか道はないと考えます。逆に代理のきかない、その人だからこそ依頼したいようなクリエイターであれば免税事業者のままでいてもさして影響ないともいえます。

 善し悪しは別として、現実には、コモディティ化された代替業者の多い事業者なのか、代理のきかない高付加価値の事業者なのか、明確に二分されていくと思います…✍️


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